強がりでバカな私は簡単に生きるの死ぬのと嘘をついてる


軽い傷の膿を絞ってるだけなのに自傷癖だと言われるの、不思議


舌を噛む勇気はないし手首切る勇気もないのをほめてください


「面倒」と「面倒じゃない」を一個ずつ選り分けるのが面倒くさい


指先で必死に擦るiPhoneの液晶みたいな薄い傷跡


その昔看護師さんに血管を針で貫通された傷です


憂鬱な時に会いたい好きな人、会いたくはない好きな人、など


慎重に涙をこぼす多すぎず少なすぎないように努める


慰めて触れて認めてほほえんで分かって許して諦めてほしい


湯上がりのやわらかなつめ眺めおり 君を疵物にできそうもない


太陽が沈んでからが好きなのはさみしくなっても許されるから


恋人が出来たと告げたら君にだけほんのちょっぴり惜しんでほしい


人生の幸と不幸を数えようなんてするのは不幸だからだ


いつだって散った後から考える どんなに花が咲いていたのか


本当はちょっぴりだけど怖いってことを歌なら言ってもいいかな


この間糸井重里が言ってたよ私は君が好きなんだって


新しい太陽がまた何もかも変えちゃう前に話せてよかった


苦しくて病気は怖い 言い訳がなくなっちゃうので健康怖い


なんだってかんだってみんな恋だって喩えることはやめてくれない?


インドまで夏目雅子が行ったなら君の家まで私も行ける


履歴書を全部三十一文字で埋めろというなら書く気になるのに


この恋はナマモノなので常温で保存は不可ですご了承あれ


このきずは決して消えないきずだからなをつけましょうきずなといいます


したしたと滴り続ける果実酒を扱うように君の涙を


どこかには届くのでしょう届いたら破り捨てられ忘れられても


あたためたイヤフォン耳にねじ込んで「おかされてる、」と呟けば眩暈


「話したら楽になった?」と聞く奴に暗証番号など話させたい


どうしてもかもめに聞きたいことがありジョナサンで一人ドリンクバー飲む


風向きを聞きたいならば風見鶏 かもめに聞くのはあの子の恋人


釣り糸の先に一本筆をつけ名前を記すほど難しい恋


まほしって萌えキャラみたいな語尾なのでつけて言います きみ生きまほし


ねえ君は私だったよ君じゃない命が胎に棲みつくまでは


改行をする位置なんて誰ひとり教えなかった教えなかった


もう足のつかない深みに来たのだな貴方を深く受け入れた夜


現代の短歌は前半後半で話を変えがち 明日命日


睦言を囁いているムツゴロウシャワーの後のブラッシングしつつ


そりゃあまあ私が好きになるほどの人なのだから恋人はいる


死にたいと思ってる人は死ぬ前にエジプトに行け(向こうで死んで)


「大丈夫」なんて言われる時よりも「大丈夫じゃない」の方が嬉しい


比喩でしか語れないことをいつまでも考えていて閉めぬカーテン


一日中コップの水を擦ってもぬるいままだと分かって先生


全身が痺れるほどの快感と危うく間違えそうなくらいの、


カカカカカカカカカ力カカカカカ どれが(ちから)か当たればキスを


積み上げた文庫の山を行き来するエレベーターさえあれば幸せ


新鮮な唾液の味をようやくに知って逃げられないなと思う


始まりの日に何一つ変わらずに自分の部屋であたたかく腐る


ゆるふわな脳味噌掬ったスプーンは汚染されてて捨てるしかない


好きだった人に優しくされるというひとひねりした辛い経験


ほんのりと濁ったお湯をかき混ぜるまだ簡単に底がのぞける


グレたけど更生するのとグレないのどっちの方が偉いんですか









遠すぎて掠れる歌をどうしても聞きとりたくて耳を澄ませる
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