パズル

もしぼくが死んだら泣いてくれそうな人の名前でパズルを作る


愛という言葉を使うことなしに二時間以内に私を口説け


ちょっとだけ幸福になれる例としていつでも君に届くことなど
(チョコレイト折り句)

経典がある日突然美少女に変わって一緒に世界を救う系


稲束を抱えて火を付け「燃える花」とか贈るから損害賠償


私には何も見えない場所に向けジョンが延々吠えかけている


ヒロインになる条件はピンチの時助けてくれる誰かがいる事


あなたから振られた朝も眉を描く精神鑑定してみてごらんよ


偉いなあ僕と付き合うなんてこと処女だったなら絶対しないよ


野良っぽい荒んだ素振りをしてたのは誰かに拾ってほしくてだった


辛口のジンジャーエールに慣れるより早く君にも慣れたくはない


自分のこと嫌いな自分が好きなので自分をよくする努力をしません


泣きそうな人に「泣いてもいいよ」って囁くなんて素敵な趣味ね


もそもそと死にたいもそもそあんぱんを食べているので脳がうるさい


「人生にいいことなんか何一つない」とか言うから嘘臭くなる


あたししか出せない味を作りたい体毛体液あんまり使わず


好きになる時期になったら君のこと探し出すからキスしていいかな


こわごわと指輪をはめてああ鍵を探しにいかねばならぬと思う


二人して買った玩具の発条をどうして私だけが巻くのだろう


「きぷ」「ふるる」「ちゅたん」「てうてう」「えふ」「あんむ」「酷いもんだな、これが未来か」


もそもそと食べている皿混ぜすぎて形がないから大丈夫です


ゆっくりと扉の開く音がする 聞きたくなくて行きたくなくて


死ねなんて願いはたったふた文字ですぐに三回唱えてしまう


音楽をかけて明かりをオフにして布団にくるまってるのに泣けない


反抗期が来てくれたので堂々とミルクを紅茶に後入れします


一生で様と呼ぶのはお日様とあなただけだよ ねえ旦那様


「さびしさは鳴る」と書き出した小説も遠く感じる。ここは静かよ。
(綿谷りさ『蹴りたい背中』)

むしろ辞書 何を知りたいか知ってなきゃほとんど何にも分かりやしない


何度でも繰り返すよと言ったのに根性無しめ 捨てられちゃった


吐き出したゲロの酸味を昨晩の嘘の尻尾の味だと思って


「精神の平穏がそんなに欲しいなら嫌いになればいいだけ」って嘘


ゼロコンマゼロサンミリがどれほどに悲しいものかわからず悲しい


自分にない物を愛すもいいけれど通ずる物を好いてもいいでしょ?


好きな理由わけなんて聞かれて困るのは何が欠けても好きだからです


段々と密室が水で埋まってく中で伝える愛の告白


終わりです。……………………………………………………………………


丁寧に弔うことはもう二度と復活できなくするっていうこと


自意識と呼ばれてしまったものだから好きも嫌いも宛名を書けない


片想い諦めるのには慣れたけどフラれちゃうのは割とクるなあ


噛み癖の強い子犬を拾っては真っ青な花貼り付ける君


サブウェイで野菜を増せたことがない? 私といれば全マシするから!


君のその右手が恋人左手愛人それなら私は何になるのだ


お茶の葉の開く音色を聞いている死んでもたぶん大丈夫みたい


雨音が段々近くに寄ってきて扉が開く気配がします


振られたというより触れられなかったというべきでないか 綿埃の白


若いってことを理由に生きられる桜の季節の夢がさめない


「下手くそな歌でもいいよ」と物凄く上手な歌手が歌っていました


いずれする完全犯罪メモの隅「夜爪を切ること」と付け足す


劇的なことが起きれば劇的に変われるんだと信じ切ってた


おおきな音、こわい。ふれてよ。ゆるゆるとなまがたくなっていく未来。









遠すぎて掠れる歌をどうしても聞きとりたくて耳を澄ませる
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