宇宙葬

水槽に沈めて殺した彼女らの名残が星になったと供述


公園の砂場にかいたミステリーサークルにまだ返事は来ない


どうしてもシャワーの滴がかわせずに冷えていくから電話をかけて


つる草がぼくに絡んでいつの日か甘い果実をつけてくれたら


ちょうどよく壊れてくれた冷蔵庫 一生物が溶けて流れた
(チョコレイト折り句)

「プログラム」「ソフト」「アプリ」の使いわけ分からないので手を握ります


うっとりと眺めている死 私にはなにひとつとて確かめられない


言うだけは簡単なのだという意味のことを上手に言っている人


好きな人集めた場所で誰ひとり好きになれずにほほえんでいる


切れかけたシャンプーを何度も押している何度だろうと押すつもりでいる


触れるだけ損をしそうな白い胸ポワトリン幼くいれない柔い痛覚


もう他に好きな子がいる人にしか恋をできないフェティシズム持ち


お日様の色したバターを贈ります 昔太陽と呼ばれた私より


起きるたび頭痛がするのはまだ君が欠乏してるせいだと思う


嘘吐きは傷付いたような顔をして中島みゆきを一人で唄う


ウヰルキンソンジンジャエールの瓶の色 彼女と君を見る私の眼


真っ黒い鸚鵡の柄の傘贈るから東風に乗り会いにきてよね


英雄とヒーローってのは何かしら違うのだろうどっちにもなれない


水音だけ響く小部屋でうずくまってる。この音は死んだように静かね。


頑張って簿記一級こんやくゆびわったので君との損益計算書こんいんとどけを書こう


契約で牙だけもらって口筋を与えられないトマス・モア死去


好きよりも嫌いの量が多いのが多分全部の理由なんだよ


俯いていなさい君にはもう二度といいことなんか起こらないから


プルタブを上手に起こして「知っていた? 昔は綺麗に別れてたのよ」


コンビニが閉まる時間に二人して素敵な場所に逃げて行こうよ


また一度夜の気温が低下して春が近付く円環構造


ピンクじゃないフラミンゴ探しに旅立つの。碧いうさぎはあっちへ行って。


ヴェルヴェット・リボルバー聴く君のせな ヴェルヴェッツを聴く私の素足


コロッケパン、ホットドッグにカツサンド、何にもないのであなたの唇


隣にはホッケーマスクの怪人が寝てるつもりでオナニーをする


人間が埋まっていそうな樹を探し根元に私の名前を刻む


ぼくたちがふたりきりならきみよりもぼくが女王になれただろうよ


劣等感だけを煮詰めたねばねばの甘さが好きな人が好きです


閏年、いやらしい年と思ってた。閨房術とは関係なかった。


新刊の帯を端まで合わせても表紙とずれている薬指


とりあえず高速バスでシートベルト締めないっていう自殺をしよう


学年のマドンナの尻を蹴り飛ばし月に行くって夢を叶えろ


うっすらと人が死んでる お茶碗を持つのが左手お箸が右手


遠くまで聞こえる声で求めます存分に耳を塞いでください


人生に必要なのは愛だった あなたじゃなくてもいいはずだった


眠いので眠くなくなるまで眠ることが今では当然じゃない


明日にはいいことあるよ(君はもう早く死ぬのが一番マシだ)


あんまりに好きすぎるのでリアクション芸人並にウザがられそう


もし君が私の恋人だったならイカを毎日揚げてもいいよ


あの夜に、幸せ一つと悲しみを四つ話したのは、わざとです。


好かれちゃうことに怯えて嫌われることを憎んでひとみしらない


「原発は絶対安全です」なんてその「絶対」は「(たぶん)絶対」


引き返す場所に何かがあるのだと思うあなたはまだドロシーだ


さよならと書かれた手紙を切り裂いた 何をされても気持ちが悪い


世の中に女子の香りという物があるなら君ので私じゃないのだ
(百合短歌)









遠すぎて掠れる歌をどうしても聞きとりたくて耳を澄ませる
inserted by FC2 system